解剖学的嗅ぎ煙草入れの以後

リレー小説がこんなに続く(というか書いてくれる方がいらっしゃる)とは思いませんでした。

個人的に「ミスったァァァァ!!!」は笑いました。パソコンの前で声に出して笑ってしまいました。
ですが、「ラブコメを描きたいor読みたいのに最早軌道修正が出来ない位バトル物に移行してて困る」という意見がありましたゆえ、最初の方からラブコメ路線でやり直そうと思います。
まぁ、前のやつの方に続きを書きたい方がいらっしゃれば続けて書いてもいいんじゃないでしょうか。
とりあえず私はラブコメを書きます。正直書けるか分かりませんけど。



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 教室を出て部室に着くと、鞄に便箋が挟まっているのを見つけた。丁寧な字で「親展 観音崎燈大様」と書かれている。
部室に一番乗りに着いたので、今は俺のプライベートな時間だ。誰もいないし、開封することに決めた。
それに。
「親展」とある。
これはつまり、俺にしか手紙の中身を見られたくないってことだろ。すると……何だ、その、
まるでラブレターみたいじゃないか。
あわてて便箋の裏面を見る。差出人の名前が書かれているかもしれないからだ。しかし、何も書かれていない。
「誰が宛てたかは中身を見ろ……ってことか」
一人で呟き、周りを確認しながら、そっと便箋を開封する。
便箋には、宛先同様丁寧な柔らかみのある字で、こう書かれていた。



「拝啓 元気かな。なかなか君に会う機会がないので手紙の文面で挨拶させてもらう。
実は、僕は今そこそこ危険な状況に立たされている。否、「僕は」というより、「僕たちは」だ。そして、「そこそこ危険」というより「大ピンチ、窮地に立たされている」といっても過言ではないかもしれない。
ともかく、具体的なことはここでは何も言えない。他人に見られるかもしれないからね。
君に良心というものがごく僅かでもあるのなら、それをフル稼働させて私のいる生徒会室に来てほしい。
それじゃ、待っているよ。
               浮橋 夢乃
追伸
ところで、手紙で知らせたのには意図があったんだ。
だって君、これの表紙を見た瞬間、「これはラブレターだ」なんてことを思わなかったかい?
残念だったね、ラブレターじゃなくて。まあ、気を悪くしないで頂戴。
僕からの精一杯の茶目っ気なんだから。」



 読み終わった瞬間、思わずため息が出た。
よりによって、浮橋さんからだとは……
浮橋さんとは、中学時代からずっと同じクラスであった。高校二年生の今年度になって、別々のクラスになってしまったのだが。
だから、割と仲がいい。少なくとも俺はそう思っている。
実際、今でも一番打ち解けて話せる異性は浮橋さんだ。
でも、問題がある。彼女はちょっと、いや相当変わっているのだ。
大体一人称が「僕」である。そんな女子がどこの国にいるか。
他にも、考え方は変わっているし、物言いもストレートだ。
ほかにも変わっているところはいくらでもある気がするが、そんなこと本人には口が裂けても言えないし、言ったら口を裂かれるだろう。
今は生徒会の副会長として頑張っているって話を聞いていたけど……、「窮地に立たされている」なんて、何があったんだろう?
彼女のことだから、ただの悪ふざけかもしれないが、それでも気になるものは気になる。
今日の部活は早引けさせてもらうか。
俺は生徒会室の方へ足を走らせた。



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 生徒会室の前に着いた。
すると、中から声が聞こえてくる。
それも、ただの話し声という感じではない。
大きな笑い声や、叫び声が聞こえるのである。
明らかに何かをして盛り上がっているのであろう。
しかし、と俺はここで自問する。なぜ楽しそうな声が聞こえるんだ? 俺は浮橋さんに「大ピンチ、助けて」というような中身の連絡を受け取ったからだったはずだ。ピンチの人が大はしゃぎするものなのか?
明らかに嫌な予感がした。目の前の扉を開けた瞬間から不吉な何かが幕を開けそうな気がしてならない。
だが、ここで引くと後で浮橋さんに小言を言われるのも、長年来の付き合いで分かっていた。
俺は、2回ノックして、ドアを開けた。
「失礼します。2年8組の観音崎です。浮橋さんはいらっしゃいますか?」
喧噪のなかでも、俺はそう言うつもりだった。
しかし、口を開くことはできなかった。
なぜなら、ドアを開けた瞬間に前方から等身大で人型の物体がこちらに向かって飛んできたからである。
飛んできた人に吹っ飛ばされる形で、俺は扉の前に勢いよく倒れた。
「う……あ痛たた……」
苦痛の声を上げながら、反射的に瞑っていた眼を開くと、こちらに馬乗りになるような形で俺の上に乗っている、黒髪の女の子と目が合った。
浮橋さんだ。
浮橋さんは両手と両膝をつき、胴体は地面と接点を持っていないような姿勢で俺の上にいた。
至近距離で目線があって、気恥ずかしくなった。
だが、浮橋さんはそんなことを少しも気に留めていないようで、微笑みながら、あろうことかこの姿勢のまま話しかけてきた。
「思ったより早かったじゃないか」
だが、俺の意識は浮橋さんの胸元に行っていた。
両腕に挟まれるような形で、平均よりは大きいであろうサイズのバストが、制服の下から自己主張している。
それに気付いてか、俺がこのままだとまともに話せないからか、浮橋さんは俺の上から退いた。
彼女は近くにある椅子に座り、机の上のティーカップを口にすると、もう一度こちらを見て微笑んだ。
浮橋さんは、一般的に言われるところの「美人」に位置する。それは衆目が認めるところだ。
烏の濡れ羽色のように黒くて、背中までかかっている髪。
端正な顔立ちに、思わず見惚れてしまうほどまぶしい笑顔。
しかし、そんな彼女に恋人がいない(できない)のは、いうまでもなくその濃い性格の為である。
「もう一度言わないとダメかい? 僕は君に返答を求めているんだけれど」
返答、とは。まずこちらから質問をさせてほしいくらいだ。今の状況を教えてくれ、と。観音崎は口を開いた。
「とりあえず、今の状況を教えてくれ、なるべく簡潔に」
浮橋は思わず見惚れてしまうような笑顔のまま、俺の質問に答えた。
「じゃあ、説明してあげよう。僕たち生徒会の役員は、みんなで枕投げに興じていた。そこへ君が入ってきた。枕を避けようとした僕と、君が衝突した。どうかな? 簡潔で分かりやすかったかな?」
苦笑しながら、俺は答える。ここでいちいち突っ込んでいても始まらない。
「いや、まあ、分かったよ。修学旅行でもないのに枕投げをしているのは、いささか不思議な感じはするけれど、別に悪いこととも言えないからな。で、俺が呼ばれた理由は何なの? 切羽詰っているとかそんな話を聞いたはずだったけど?」
悪びれもせずに浮橋は答えた。
「そうそう、それだよ、それ。実は今、千羽鶴を折っていてね、君、折り紙が得意だったろう? 手伝ってよ」
いや、明らかに今千羽鶴は折ってなかっただろ! 心の中でそう呟いて、俺は応答した。
「確かに折り紙は得意だけど、別にこれだけ人数がいれば俺要らないんじゃないか?」
今この生徒会室には俺を除いても6人はいる。
「ところがどっこい。折らなきゃいけない弦の量は一万羽。七夕祭りで出品することになってね」
「ふーん、そういうことね。俺も暇じゃないんだけど、じゃあ手伝うよ。紙取って」
「あ、はい、どうぞっ」
そう言って俺に紙を渡してくれたのは、背が小さい女の子であった。一年生のようである。
「あ、どうもありがとう。えーっと――?」
「古野芽愛です。はじめまして、せんぱい」
そう言いながら、彼女は会釈をした。こちらも会釈を返す。
「2年の観音崎です。浮橋さんとは同じ中学」
「へぇ、そうだったんですか!」
そこで長机のお誕生日席にいつの間にか座っている子が、声を出した。「会長」と書かれた紙が前に置いてある。
「じゃあ折角ですから、誰が一番早く折れるか競争しましょう」
あちこちから同意の声が上がる。
「それでは始めますよ、全員紙の用意はいいですか、位置について――始め!」
皆無言で一斉に折り始める。
かさかさと紙の擦れる音が聞こえる。
最初に手を止めたのは、俺だった。
「一番は飛び入りの観音崎君ですか、凄いですね」
俺はまんざらでもない。
「昔から折り紙は得意なんです」
俺の隣で古野芽さんが嬌声をあげる。
「すごいですねせんぱい! 手先器用なんですか?」
「いや、まあね」
ふとこちらを無言で見ている浮橋さんの視線に気づいて、俺は話を止めた。



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続きお願いしまーす。
中途半端なところでごめんなさーい。